今年のプロ野球ドラフト会議は逸材が豊富だという。特に大学生、社会人のピッチャーは身長185センチ以上で球速も軒並み150キロを楽々超える剛球投手が揃っている。当該の指名選手を紹介する投球映像からも、そのレベルの高さは十分に実感できる。例年ならば2,3人というハイレベルのピッチャーが、今年は2巡目以降もゴロゴロいる。何故・・・生まれ持っての才能、それを磨く科学的トレーニング、更に計算つくされたメニューで栄養を効率よく摂取し、メンタルトレーニングを加えた結果、というのは正論であろう。しかし「試合をしなかった事」も考えられるのではないだろうか。コロナ禍で人と人との接触が叶わず、通常なら連戦が続く高校時代、大学時代に圧倒的に試合数が少なかった事が逸材を育む事に繋がったのではないだろうか。選手なら誰しも、試合する以上、勝ちたい。だから勝利の為には無理もする。試合で勝つの為に練習試合もする。試合でレギュラー獲得の為に、練習の負荷は大きくなる。今回のドラフト指名選手たちの世代は、試合が出来なかった。だから貴重な才能は削られずに済んだのかも知れない。何しろ真夏の太陽の下で、執念とか、根性とか、闘魂とかの呪詛に憑かれずにきっちりと身体作りができた。試合に関わる期待や不安といった化け物に睡眠時間を奪われることなく熟睡できたこと。コロナ禍が素晴らしい才能たちの群雄割拠を生んだのではないだろうか。それは呪われた夏の風物詩「夏の甲子園大会」が実は不要だという事の証明になるかも知れない。大人の都合で子供を見世物にする愚を見直す時、それは芸能界だけの話ではない。